今回は、大家さんとわたしのエピソード第2弾。日本の伝統文化に触れる機会を大家さんがくれたお話です。
日本の伝統文化をかじる機会をくれた大家さん
子どもの頃からたくさんの習い事をしてきたが、長年習っていた書道以外の日本文化に触れたことはありませんでした。おそらく多くの人が感じているように、着物やお茶をはじめとした日本の伝統的な文化には、敷居の高さを感じていました。
しかし、大家さんのアパートに住み始めたことをきっかけに私は日本の伝統的な文化を少しだけ触れる機会を得ました。
大家さんは呉服屋さんでした。大家さんと親しくしているうちに、自然と日本文化を身近に感じるようになっていったのです。
はじめてのお着物
引っ越して間もない頃、休日のゆったりとした午後、大家さんとお茶を飲んでいました。大家さんのお仕事のことやお客さんとのエピソードを聞いているうちに、私も少しずつ着物に興味が出てきました。全く無知だった私に、大家さんは着物のことをいろいろ教えてくれました。
七五三、大学の卒業式、成人式といったライフイベントでしか着物を着たことがありませんでしたが、私に似合うと大家さんが見立ててくれた生地で、自分だけの着物を作ってもらいました。
はじめての私だけのお着物は、鮮やかな若草色の訪問着です。
早速、着付けてもらいおめかしをして、大家さんが行きつけの椿山荘にお茶をしに行きました。お茶を運んできてくれたウエイトレスのお姉さんが、「素敵ですね」と声をかけてくれました。恥ずかしがりながらお礼を言う私をよそに、大家さんは得意げな表情をしていました。
お着物をきっかけに広がる日本文化の世界-お茶・日本舞踊
せっかく購入したのだから、着付けができるようになりたいと思い、私の仕事の休みの日に大家さんに毎週着付けを教えてもらっていました。
このお着物をきっかけに、それまで興味の無かった他の日本文化にも少し興味が出てきました。
子どもの頃から踊りを習っていたことから日本舞踊に親しみやすさを感じ、初挑戦することにしました。日本舞踊ならではの所作がなかなか難しく、苦戦しましたが、やはり一曲踊れるようになるとうれしいものです。勉強と称して、お着物をきて踊りの先生の舞台を何度か見に行きました。古典のほか、現代風にアレンジした舞踊もあり、興味深かったです。結局、仕事が忙しくお稽古は2年弱でやめることになってしまいましたが、また余裕ができたら是非挑戦したいことの一つです。
お茶の世界にも触れさせてもらいました。あるとき、大家さんのお店のお客さんがお茶会を開くというので、同行させてもらえることになったのです。お茶の世界も奥深く、覚えるべき作法が山ほどあります。お茶会に向けて、付け焼き刃ですが、大まかな流れとお作法をたたき込んでもらいました。当日は長時間の慣れない正座により足がピリピリで大変でしたが、貴重な体験をさせてもらいました。まさに森下典子さん著書「日日是好日」のような世界を垣間見れました。
おわりに
大家さんのおかげで普通に生活していたら触れることのなかった、日本文化の世界を垣間見ることができました。素敵な経験をさせてくれた大家さんに感謝しています。
私の経験のように、敷居が高いと思っている世界でも少しだけ足を踏み入れてみることによって、感じ方が変わるかもしれません。是非、チャレンジすることを毛嫌いせずにいきたいものです。