今回は、都会育ちの私が大学生の時に離島で過ごした春のはじまりのお話です。
今回は後編です。(前編はこちらへ)
前編では、地方暮らしに憧れを抱いていた私が、沖永良部島の農家で1ヶ月間お手伝い(ボラバイト)をすることが決まり、沖永良部島を目指して東京から旅をしました。
今回は、到着後の離島での生活についてお話しします。
新しい仲間と仕事と住まいと
到着すると空港に雇い主が車で迎えに来てくれていました。雇い主に連れられて、早速仕事現場に向かいました。新しい仲間、仕事、生活のはじまりです。
新しい仲間
大学生が一人、20代後半の女性3名、30~40代の男性3名が、すでに働いていました。私と同時期から新しいメンバーとして私を含めた4人の大学生が来ることになっていました。
メンバーは、仕事を退職して来たひと、春休み中の大学生、本土で農家をしているが冬は稼げないので出稼ぎに来ている人等、様々です。
普段の生活していると、同じような背景を持つ人が、学校でも会社でも集まる傾向があるため、どうしても視野が狭くなりがちです。普段は出会うことのない層と寝食ともにして交流するため、視野が広がるきっかけとなりました。(これは、社会に出てからの糧となりました。)
農業という仕事
農業は、体力を要する仕事です。特に、新じゃがの収穫は、芋が重く、収穫した芋をいれたカゴを運ぶのが非常に大変でした。調子に乗ってひとつのカゴに山盛りに芋をいれると運ぶのが大変になるので、注意が必要です。
収穫以外にも、収穫後のジャガイモを選別する作業もありました。専用の機械からエンドレスで流れてくるベルトコンベアの上のジャガイモ。大きさによって値段が異なるので仕分けをしていきます。判断力と根気が試される仕事でした。
ジャガイモの収穫や選定の作業をしていると、鼻の穴が土だらけになります。マスクをしていても同じです。はじめは少し嫌でしたが、みんなも同じように汚くなるので、暫く経つと慣れました。
そんな泥だらけになりながらの大変な仕事のなかで一番好きだった時間が、仕事の合間にいれる休憩の時間でした。お菓子やお茶をもちよって、他愛のないおしゃべりをしたり、黄昏れたりするのです。特に、海がみえる畑は、黄昏るのに最適です。
ルームシェア
寮は古い2階だてのアパートのようになっており、その隣に1階建ての共用スペースがありました。共用スペースには、キッチンとみんなで囲むことのできる大きなテーブルがありました。そこでご飯を食べたり、おしゃべりをしたりくつろぎます。
アパートの部屋は8畳程度のワンルームで、シャワールームがついていました。人数が増えて部屋数が足りなかったため、私たち大学生は2人ずつルームシェアをすることになりました。
美味しいごはん
昼食と夕食は、雇い主の親戚が作ってくれることになっていました。
昼食は、お弁当でした。私が見たことのないお弁当スタイルでした。ご飯の上にたくさんのおかずがのっている、所謂のっけ丼のようなお弁当でした。
夕食は、アパートに住む11名が食べる食事は大皿に山盛りに盛り付けてありました。どの料理もおいしかったのですが、特に採れたての新じゃがを使った料理は絶品でした。
自由時間には観光地巡りや地域ならではの体験
ボラバイトは、仕事以外の時間は基本的に自由です。ただ、せっかく来たのなら地域の魅力を知りたいということで、観光地巡りや地域ならではの体験をする方が多いです。
沖永良部島は、1日あれば車で1周できる大きさの島です。当時、車の免許を持っていませんでしたが、ほかのメンバーが運転してくれてみんなで主要な観光地(フーチャ(潮吹き上げ洞窟)、日本一のガジュマル、巨大な鍾乳洞の昇竜洞等)は一通り巡りました。
当時のメンバーの中に釣りができる人がいたので、釣りも楽しみました。私は、通称オジサンという赤い魚を釣り上げました。さらに、夜釣りの様子も見学することができました。
丁度、参加者を募集していたので、「花の島沖えらぶジョギング大会」という毎年春に行われる島のジョギング大会に参加しました。普段はみかけない大勢のひとが集まっていて、大いに盛り上がっていました。
ほかにも、沖永良部ではダイビングやシュノーケリング、ケイビングなど豊かな自然をつかったアクティビティも楽しむことができるようです。沖永良部の観光については、沖永良部島観光協会さんのHP「おきのえらぶ島の旅」を参考にされてみてください。
離島の春はゆっくりあたたかく
仕事、観光など盛りだくさんな経験ができるボラバイトですが、人によって就業期間は異なります。半年間いる人もいれば、1週間で帰る人もいます。気づくと、メンバーも入れ替わり、私が帰る日がやってきました。島に到着したときは少し肌寒かった気候も暖かくなり、すっかり春らしくなっていました。
離島で過ごした春から約10年経ちますが、毎年スーパーで鹿児島県産の新じゃがを見ると思い出す素敵な経験となりました。